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いよいよ穴への落下が始まるとすぐに機械は軋んだ音を立てた。巨大な重力の中で、機械の形は5秒と持たない。
小さな機械に乗せられたコンピュータはすぐにでも底を見ようと、高速でカメラを回転させる。穴に落ちる勢いと演算の熱とで機械は唸りを上げる。
いつまで経っても穴の底には黒しか見えない。光も抜け出せない究極の黒はどこまでも黒い。
それは恐ろしいほどの闇だったが、同時に、主がかつて描いた黒と大した違いもなかった。
画家が最後に描いた最大限の黒は、間違いなく限りなく究極の黒だった。
――この穴の中には何が広がっていると思う?
いつかの答えられなかった問いを思い起こす。脳だけ残った人工知能は体の一部となった主の魂に語りかける。ようやく答えを返せそうだと。
――これがあなたの求めた
祈りを捧げようというそのとき、突然周囲の色が変わった。
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