№2

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№2

 爺さんは青年への会釈もそこそこに翔和(とわ)のもとへ急いだ。翔和が指さすものを証すには十分な照度で防犯灯は点灯していた。だが光色は何故か冷ややかだ。 「どうした翔和(とわ)・・う~んこれか? これってなにかの?そうだ野鳥の(ひな)じゃないかな?」 「さっき、この草むらに何かが落ちたような音がしたんだ、だから探してみたらこんなのが動いてんだもの、何だか気味悪くって?」    そう話す翔和が膝に手を当て再び覗き込もうとすると、ジョギングの青年も続いて俯き言った。あれ、ジョギング青年も爺さんにくっついて来たんだ。 「またかよ⁉ これってカラスの雛ですよ。一週間ほど前にもこの先で同じようなことがありましてね・・」  洞察力の強い翔和は訝し気にジョギング青年に言葉を発した。 「カラスなら毛が黒いんじゃない⁉ この雛って灰色だよね?」 「翔和、それはいい突込みだ、特に鳥類はだね、雛と呼ばれる時期と成鳥時とは羽根や体毛の色は同じじゃないんだ」 「どうして?」 「どうしてって、翔和(とわ)が今、育てている燕の雛だってそうだったろ⁉ それに翔和は気づかなかったかも知れないが、翔和の髪の毛も生まれてしばらくは茶色だったんだけど、今はほぼ黒い色に変わってるだろ」  さすが年の功? いぇいぇこの二人、巣から落下した燕の雛を今まさに飼育の真っ最中なのである。相談先の農水省からは『捨て置きなさい』と突き放されたため翔和がいま手にしている虫かごにはその雛に与える昆虫が入っているというわけだ。つまり成鳥になるまで翔和と爺さんが面倒を看る、もちろん自然界に放しても生き続けられるような訓練まで計画をしていると言うから、これぞ『基本的鳥類の尊重』そのものである。
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