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№4
「せっかくですが交番じゃカラスは預かれません」
おまわりさんは二人いた。少し丸顔の優しそうなおまわりさんが『カラスは預かれません』と言った。
カウンター越しで対面している爺さんも負けていなかった。
「どうしてなんですか? これって落とし物じゃないですか?」
「あなたの持っているそれは物ではありません、生き物です」
「生き物ね? それじゃ人間の赤ちゃんならどうします。まさか捨て置きなさいとは言えないでしょ?」
赤ちゃんを例えられたおまわりさん、さすが返事に困っていみたいだ。
この間がチャンスだと焦った爺さん、よせばいいのに勢い余ってつい相手の堪忍袋に触れてしまった。
「あなた方、公務員って感情ってものが無いのかね、この間だってそうだ、拾った燕のことで農水省に電話相談した時の担当者『捨て置きなさい』だなんてよくも言えるよね⁉」
「それは悔しいですよね・・それで、その燕はどうされたんですか?」
「お陰で孫と一緒に試行錯誤の毎日ですよ、今日もこうして餌を捕りに来てんじゃないですか」
爺さん、翔和が手にしている虫かごのほうに視線を送った。
爺さんに続いてジョギングの青年も恐る恐る呟いた。
「今日もパトロールに出てりゃよかったのに・・」
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