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絶望
夜が明けた。
攻撃の音はすでに止んでいたが、アリサは動けなかった。
日暮れ近くになり、ようやく意を決して、隣りの夫婦に助けてもらおうと玄関を踏み出したとき、アリサは息を呑んだ。
道路のあちこちに死体が転がっていた。
隣りの家の老夫婦は玄関前で血だらけになって事切れていた。
アリサは助けを求めて学校へと向かった。
行く途中にも道路にはたくさんの死体が転がっている。
アリサは小走りになった。
──会いたい。友だちや先生に会いたい。
学校が近づくにつれ惨状は増していく。
家々は破壊され道路には瓦礫が散乱している。
折れそうになる心に抗うようにしてアリサは必死に学校へと向かった。
学校が見えた。
だが、標的となり爆撃された校舎は、崩れ落ちていた。
焼け爛れた柱が僅かに残され瓦礫が山のように積み重なっている。
数メートル先には、学校に向かって避難しようとしていた人々の死体が折り重なっているのが見えた。
どくん、どくん、どくん、どくん……。
アリサの心臓は激しく脈打ち、激しい怒りとも嘆きともつかない感情に支配されていった。
──なんなんだ。これは……。こんなことってあるのか! 大切なものすべてが奪い去られてしまうなんて!
アリサは踵を返した。
──この街は死んだんだ。
もはや誰も助けてくれる人などいないことをアリサは悟った。
そして深夜になるのを待って家の庭に二人の墓を作ったのだ。
墓といっても穴を掘り埋めただけの。
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