死神宅急便

1/1

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

死神宅急便

三ヶ月後、春恵が死んでからも、日々は流れてゆく。 翔と咲は感情に浸る間もなく、仕事や家事に 追われていた。 亮太は渡せずにいた春恵への誕生日プレゼントを 瞬きもせずに眺める。 近くには黒いランドセルがおざなりに置かれている。 「おばあちゃんが死んじゃう前に 渡したかったなぁ」 庭にある紅葉は赤く色づき、地面には 広葉樹の枯れ葉が散らばっていた。 風は冷たく、季節はすっかり冬になってきている。 「じゃあ、お姉さんがそのプレゼント 届けてあげよっか?」 見知らぬ人の声に顔を上げると黒いマント姿の女が 亮太の前に座り込み、顔を覗き込んでいた。 足音も気配もしなかった。 「うわぁっ!!」 亮太は突然のことに勢いよく後ずさった。 女はそんな亮太を見てクスクス笑っている。 「誰っ?!」 「うふふ。申し遅れました。 私、死神のユーカっていうの」 「死神?」 「あ、そうかまだ七歳だもんね。 死神って言葉分からないか。 死神って言うのは死んだ人の魂を天国へと 案内してあげる神様のことだよ。」 「へー! お姉さん凄いんだね!!」 亮太は目をキラキラと輝かせた。 「それで、私は死神宅急便って仕事をしてるの。 死んだ人と離れ離れになっちゃった、 残された家族の人がどうしても天国に届けたいものを 私達が届けてあげるのよ。」 にっこりと笑うユーカ。 大人なら不信感を抱くところだが 素直な亮太は、さらに瞳を輝かせる。 「それじゃあ、おばあちゃんへの 誕生日プレゼントも届けてくれるの!?」 「うん、もちろんっ」 亮太は似顔絵を見つめ、笑みをこぼした。 この絵がおばあちゃんに届くのだと。 「じゃあお願い、お姉さん。 僕の絵をおばあちゃんに届けてください!」 「かしこまりました、可愛いお客様。 普通ならお代を貰うところだけど… 可愛いからナシにしちゃお!」 ユーかはふふふっと笑い、亮太が瞬きをした 次の瞬間消えていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加