お届け物です

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お届け物です

「桜木さんっ、お届け物ですよ」 ふわふわとした雲の上に腰掛けていた春恵は 担当死神のユーカの声に振り向いた。 「また、お前さんかい」 「ちょっとー!またってヒドくないですかー! それより、可愛いお客様からのお届け物ですよ!」 ユーカはダンボールのガムテープをビリビリと 剥がし、春恵に中身を笑顔で手渡した。 春恵は渡された紙を見て瞳を大きく揺らがせた。 「これは…」 「うふふ。桜木さんのお孫さんって とっても可愛いんですね」 ユーカが紙を覗き込んで微笑んだ。 それは、お世辞にもうまいとは言えない 春恵の似顔絵だった。 その下には緑のクレヨンで おばあちゃん、ひゃくさいのたんじょうび、 おめでとう! と描かれている。 ヘタな字だなぁと呟きつつも 春恵は孫が生きていてよかったと思った。 泣いているのを気づかれないようにさりげなく 目尻を触る。 「良かったんですか? お孫さんの代わりに自分の寿命を犠牲にするなんて」 ユーカは眉を八の字にして聞く。 「あぁ。孫のためなら何でもするさ。 あの子に…ばあちゃん喜んでたよ、ありがとう って伝えておいてくれ。」 ユーカに向かってにっこり微笑む。 百歳の誕生日を孫達と一緒に迎えられなかったのは 残念だが、春恵は孫からこんなにいいプレゼントを もらえて満足していた。 春恵は泣きそうな顔をしたかと思うと 元気よく天を仰いで笑った。
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