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死の運命
人間には死の運命というものがある。
だれしもその道を避けては通れない。
春恵は生まれつき死の運命を視ることができた。
魂が紫色の人物は二週間以内に死んで、
青色の魂は三年以内に死に、
水色の魂は五年以内に死ぬ。
魂が黒に近づいていくとその分死に近づく。
そして、亮太の魂は生まれたときから
真っ黒に染まっていた。
既に死んでいないのがおかしいくらいに。
だから、春恵は生まれたばかりの孫を助けるために
あと一年残っている寿命を差し出し、
亮太を助けてほしいと願った。
今頃、亮太はどうしているだろうか。
天国は時間の流れが緩やかで、次の転生のために
記憶が朧げになっていく。
「亮太、元気に過ごすんだよ」
わずかに残った記憶を頼りに言葉を紡いだ。
「桜木さーん!転生の時間ですよー!」
ユーカが白い扉の前で大きく手を振っている。
その瞬間、春恵の中から全ての記憶が
あぶくとなって
弾けて消えた。
春恵は子供のように「はーい!」
と返事をしてユーカに駆け寄って行った。
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