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「おい坂巻。昨日泊まったのか」
「……そうです」
「昨日より酷くなってるぞ」
部長に言われて見た左人差し指は、包帯の上からでも明らかにわかるほど膨れ上がっていた。
「おかしいな、昨日棘は抜いてもらったんですが」
「棘?」
「そうです」
「それ、まだなんか刺さってるんじゃないか」
そう言われてズキリと指先が痛くなる。包帯を剥がしてみても腫れ上がっていてよくわからない。
「ちゃんと病院いったのかよ」
「行きましたよ。包帯してるじゃないですか」
「変な病気なんじゃないだろうな」
じろりと睨まれ居心地が悪くなる。俺だって好きで具合が悪いんじゃない。
「昼休みに別の病院に行ってこい」
また昼飯抜きか。そう思うとうんざりしてくる。指先を見た。まるで桜桃のように腫れているが、今日は不思議と痛みがなかった。そうして午後に別の病院に行き、首を傾げた。
「棘が刺さっています」
「棘……でしょうか。昨日別の病院に行って抜いてもらったところなのですが」
「そんなこと言っても影が見えるもの」
モニタのレントゲン画像を見れば、素人の自分にもわかるほどくっきりと細長い棒が指のシルエットの中に埋まっている。
「切開して取るけど、いいよね?」
「はい」
手術自体はすぐに終わり、再び指に包帯を巻かれ、処方された抗生物質と痛み止めを受け取る。取り出されたのはやはり細い木の棘だ。5ミリほどだろうか。昨日別の医者で抜いてもらったものより随分長い。
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