プロローグ

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プロローグ

 旦那である光臣のやましい疑惑が黒だったという恐怖を誤魔化す為に、浮気なんて何でもないと自己防衛のように思い込ませていた。妊娠した頃から光臣の在宅勤務が減って、一緒に過ごす時間も減っていた。だから魔が差しただけでしょ、本気なわけがない、と。我が子はまだ1歳に満たない赤ん坊なのだから、強い母親でありたかった。  心を強く持って見た旦那の浮気の証拠写真。ホテルへ向かう光臣の隣に写っていたのは旦那の職場にいる私より若い女性社員とか、たまに行く顔なじみのバーの妖艶な雰囲気を持った年上の綺麗なお姉さんだとか、私が想像出来る範囲の相手ではなかった。  そこに写っていたのは――。 「……伊織」  私の最愛の弟だった。
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