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ネギトロ
佐藤智人がプレイヤー名「ネギトロ」となって特別エリアに移動してから4日が経過した。未だに経験値はクリア条件に到達せず、それどころかスタート時の2817XPから1360XPまで減少していた。
この世界では重体から回復する度に経験値が100XP、死亡して蘇生する度に500XP減るルールになっていて、ネギトロは既に2回死亡し、6回重体になっていた。それに対して「生存」の経験値しか獲得していない為に、経験値は減る一方だった。
そして彼は拠点の洞窟で傷の痛みに耐えていた。前回の戦闘で左足のふくらはぎを剣で深く斬られていた。
「ゴメンね、ネギちゃん。ワタシを庇ってまたケガして」
水で濡らした布をネギトロの額に乗せながら、心配そうにするシャーロット。逃げようとしてシャーロットが転んでしまい、剣士に攻撃されたのを、ネギトロが咄嗟に庇って負傷したのだった。
二人の傍らでギリギリと歯軋りするレパルス。
「おいネギトロ、いい加減に敵と闘おう。スタートしてから逃げてばかりじゃないか」
「いや、これで良いんです。この世界には僕の友達が居ます。探し出して合流する事に専念しましょう」
弱々しく笑うネギトロ。鋭い爪が生えた手をジッと眺める。
「それにしても、ゴブリンとはね。ミノタウロスとかサラマンダーだったら良かったのに」
「ゴメンね、ネギちゃん。ワタシ達の為に魔族を選んだから......」
涙目になるシャーロット。
「ハハハ、何度も言ってますけど、魔族を選んだのは別の理由ですよ。だから気にしないで下さい。それよりも、堕天使の方がツラいでしょ」
「それは仕方がない。元はと言えば、シャーロットのミスでお前達を死なせてしまったのだ。ミスに気付かなかった私の責任でもある」
深々と頭を下げるレパルス。
天使達と共に創世神アズミランの所へ向かった佐藤智人。直前まで彼は「種族=ドワーフ、職業=戦士」を選択するつもりだった。
しかし、アズミランは天使達から手違いがあった話を聞くと、佐藤智人に謝罪した上で、
「今回のミスの責任は誰にあるのか」
と問いた。そして天使達に
「お前達は堕天使として魔族になりなさい」
と命じたのだった。
天使にとって堕天使になるのは耐え難い屈辱らしく、絶望する二人を見た佐藤智人は、「魔族を選んだ場合」についてアズミランに聞き直した。
〈魔族を選択した場合〉
○魔族は冒険者との闘いに勝利する事で経験値を獲得出来る。
○魔族は冒険者よりも基本的性能(HP、攻撃力、防御力、スピード等)が低いが、代わりに一日生存すると「生存ボーナスXP」を獲得出来る。ボーナスXPは滞在するエリア内の冒険者の人数に応じて上下する。
○レベル差がある冒険者に勝利すれば、沢山の経験値を獲得出来る。
○魔族は条件クリア後に、所有物を売って金(ブレス)に替える事が出来る。更に人間界に転生した場合、その金を人間界で流通する通貨として持ち込む事が可能である。※1ブレス=10ドル
○魔族を選択した場合、職業は選択出来るが、種族はランダムに割り振られる。職業は自分で設定する事も可能
(不可判定が出る場合もある)。
種族によって職業との相性があり、パラメーターが変わるので注意が必要となる。
説明を聞くと、佐藤智人は魔族を選択した。そして彼に割り振られた種族はゴブリン。そこで暫く考えた末に、彼は「トラップ」と言う職業を設定して承認されたのだった。
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