トラップ

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オンラインの対戦ゲームで運営が提供するサービスに満足せず、MODに手を出した二人が正直理解出来なかった。特にチート行為が疑われる三上の事は「そこまでして勝ちたいのか」とドン引きしていた。 それを言葉にしなかったのは、二人が単なる友達だったからだ。どうでも良い相手に「チートなんか止めろ!」と声を荒げて揉める必要は無い。そんな事に労力を費やすのは時間の無駄だ。 ①をクリアした時点でどうやってチームから離脱するか。その算段を既に立て始めていた。 「なあ、高橋と水原はどっちを選んだか知ってるか?」 ネギトロが聞くと二人は顔を見合せて 「知らねーな」と答えた。 ネギトロにとって高橋アレンは部活仲間の親友だ。水原廉は家が近所で、小学生の頃は学校にも一緒に通っていた。遊びに誘えば断らないし、親友と呼んでも良いだろう。 何となくだが、二人は冒険者を選んだ予感があった。 「高橋と水原はオマエと仲が良いからな。魔族なら仲間にしたいし、冒険者なら闘いたく無いよな」 「ああ、その通りだ」 「解る解る。オレもあの遊覧船に乗ってた女の子達とは闘いたく無いもん」 カニ味噌がおどけると、すかさず 「いや、オマエあの二人に声掛けれなくて、チラチラ見てただけじゃん」 とエンガワがツッコミを入れた。 その日から「冒険者狩り」が始まった。既に冒険者達にはエサを撒いてあるので、冒険者達の方からどんどん寄って来てくれた。 闘い方は簡単で、ネギトロと堕天使達が視界の開けた場所で囮役となる。 冒険者達が襲撃の機会を伺って無警戒となっている所を、カニ味噌とエンガワが奇襲する戦法だった。 エンガワはプログラマーの能力でプログラムを改竄し、敵味方のヒット範囲や攻撃威力を操った。カニ味噌もグリッチの能力でエリアのバグを探知。「石の彫刻の前で屈伸運動を5回してから攻撃をすると、離れた場所にいる冒険者達にもダメージを与える」と言ったメチャクチャな攻撃を加えた。 カニ味噌達の奇襲でパニックに陥った冒険者達を、堕天使2人がトドメを刺すパターンも確立した。罠だと気付いた冒険者達も、全滅させれば問題無かった。 「堕天使とゴブリンは楽勝」から「堕天使とゴブリンには近付くな」にようやく噂が変わる頃には、冒険者14チームが全滅し、ネギトロ達は人生をリプレイする条件クリアに必要な経験値を、獲得する事が出来たのだった。 冒険者達から奪ったアイテムを換金して分配した所、一人60万7400ドルを保持して人間界に戻れる事が解った。
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