種あかし

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種あかし

その晩ネギトロは酔っ払って爆睡したが、目が覚めると創世神の神殿に居た。天使が急いでアズミランを呼びに行く。すぐにアズミランが姿を現した。 「佐藤智人、お前は本来の人生で獲得すべき経験値4126以上の点数を獲得した。もう一度0歳に戻り、17歳の7月24日までリプレイする事が可能だ。お前はリプレイを望むか」 厳かな声に「はい」と答える佐藤智人。 「それでは、この契約書にサインをしなさい」 天使が契約書と羽根付きペンを手渡すと、佐藤智人はサインをした。 「よろしい」と言った後、天使に「二人を呼んで来なさい」と命じるアズミラン。佐藤智人が怪訝そうな顔をしていると、レパルスとシャーロットが天使の姿で現れた。 「今から20年程前、この天界から魔族が脱走したの。本来はあり得ないのだけど、その魔族は「トラップ」と言う職業を創り出して、警備の天使を騙した。そして人間界に紛れて行方をくらませた。それが貴方の父親、グラディスよ」 シャーロットの声が神殿に響く。 「トラップは魔族だけが選べる職業。その他の特徴は良く解らないまま、禁止職業に指定されたの。そして7月24日に遊覧船の事故が起きた」 シャーロットの声は微かに震えていた。 「遊覧船の事故は予定に無かったと話したけど、あれは嘘なの。あの時に遊覧船に衝突したのは、脱走した魔族が持ち出した海獣「デビルウェール」よ。きっと貴方がまだ小さい頃に海に放たれて、久しぶりに貴方の姿を見て近付いたのでしょうね」 デビルウェールはクジラに似た伝説の海獣である。グラディスはこの海獣の赤ちゃんを連れて脱走したのだった。 「事故に海獣が関わっている以上、普通の海難事故にする訳には行かなかった。だから創世神はワタシ達を堕天使にして、貴方の目的を探る事になったのよ。何よりも、貴方は既に演劇部の仲間達に「トラップ」を仕掛けていると判断したから」 その言葉を聞いたネギトロは、立ち上がって両手を広げ、「アハハハハ」と笑い出した。 「僕が大切な仲間達に「トラップ」を仕掛けただって?そんな事する訳が無いじゃないか」 そしてネギトロは、遊覧船の沈没事故の真相について、語り出したのだった。
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