グラディス

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グラディス

魔族と人間のハーフであるネギトロには、産まれた時から「トラップ」の技を扱える能力が継承されていた。 そしてネギトロは14歳の時に父親の日記を読み、天界の『バターリャ』では冒険者と魔族の闘いが行われている事を知る。 佐藤智人が5歳の時に死んだ父親。ヴァンパイア族だった彼は、時々血を飲めば、生き続ける事が出来た。そんな彼は天界でデビルウェールの飼育係を担当していたが、脱走後は東京の新大久保に潜伏していた。多民族が暮らすカオスな街は、彼にとって最適な場所だった。 そんな彼は、ある日佐藤理恵子と言う女性を助ける。元彼に付きまとわれた挙げ句「オマエを殺してオレも死ぬ」と言われて佐藤理恵子はフリーズしたが、偶然通り掛かったグラディスが元彼の腕を折って撃退した。 喜んだ彼女はグラディスを自分が住んでいるアパートに招く。そして彼が野宿している事を知ると「用心棒として部屋に居て欲しい」と提案する。同居を始めた二人だったが、グラディスが食事をしない事で、すぐに彼がヴァンパイア族だと知る。 そのまま立ち去ろうとしたグラディスだったが、 「定期的に血を飲む必要があるなら、私の月経の血があるじゃない」 と彼女が言い、グラディスは涙する。 平和的に血を確保する方法を手に入れたグラディスは夜間警備員として働き始め、やがて二人の間には息子が誕生した。 グラディスは愛する妻と息子を大切にしていたが、日記を残して姿を消す。 その日記には、ある天使に「逃げろ」と指示されて脱走した事、「デビルウェールを決してアズミランに渡すな」と厳命された事が記されていた。 グラディスは息子に「トラップ」を仕掛けていた。発動条件は「誰かが佐藤智人を殺害した場合」に設定され、効果は「天界の『バターリャ』で魔族として闘う」に設定されていた。 つまり、遊覧船の海難事故は、デビルウェールの衝突が原因では無く、何者かがネギトロを殺害しようとして遊覧船の船底を爆破したからだった。 そしてネギトロの殺害によって「トラップ」が発動。 アズミランも天使達もネギトロも、全員が自分で思考していると思いながら、実際には「トラップ」の効果を実現する為に行動したのだった。 ネギトロは父親の日記によって、自分に「トラップ」が仕掛けてある事を理解していた。だから『バターリャ』では戦闘には参加せず、逃走のみを選択し続けたのだった。 では何故、グラディスは「魔族として闘う」事を指定したのかと言うと、当然ながら理由があった。
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