夏の奏

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 僕と原田は、そこに置かれた椅子にテキトーに腰を掛けて、改めて会話を始める。 「佐藤、おめーは3時間目と4時間目の水泳の時間に、軽い熱中症になり途中退席した。田城は、その隙をついておめーに下着ドロの罪を擦り付けた」 「あぁ、そうだな」 「だがしかし、この俺の目から逃れられねー」 「なんだ? 何かあったのか?」 「田城は、授業開始前にたった3分程度の時間という誤差の遅れで、プールの授業の集合に現れていた。この3分間という時間が大切なわけだな」 「……たった3分で何が出来るってんだ。カップラーメンくらいしか作れないだろ」 「3分って時間は、短かい様で案外長いんだ。分かるか? 何かをするには意外と十分な時間なわけだ」 「……でも、仮にその3分間という時間で下着を盗った、という事が実行出来てたとして。他の女子に見られる可能性も拭いきれないだろう?」 「そこが、あいつの、田城の頭の良い所なんだろーな。今日で水泳の授業は何回目だ?」 「3回? いや、4回か」 「そーだ、4回だ。田城の野郎はその4回で女子全員が更衣室から出る時間の平均を計算し、実行に至ったわけだ」 「きもいな」
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