夏の奏

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 6時間目のチャイムが鳴り響き、授業の終わりの挨拶が聞こえ、授業が終わったその時だ。  僕は緊張を覚える自分の頬を叩き、唾液を飲み込んで教室への扉を勢い良く開けた。  そこに居たのは6時間目の国語の授業を執り行った国語教師の名原先生と、クラスの皆である。  暫し呆然とする教室の中、僕は教卓へと足を運ばせる。  僕の足は、今まで以上にどこか重さを感じさせている。少し鼓動も早い。教卓の前に辿り着いたその時に、少し深呼吸をして前を向く。  目の前に居た人間全員が、人間には見えなかった。僕を敵対視する宇宙人に見えた。そんな気がした。  先に口を動かしたのは名原先生であった。 「佐藤くん? あなた授業をサボって何を……?」 「……先生すみません。その話はまた後で聞きます。今はそんな事を話しにここに戻って来たのではないのです」  僕は至って冷静な様子を装いながら、先生へ声を返す。 「そうだよ。自白しに来たんだよな? 下着ドロさんよ?」  そう言って来たのは平野だ。先程の昼休みにて僕へ殴りかかってきたやつだ。 「……してもいない事で、何を自白しろって……?」
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