夏の奏

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 でも、幼馴染と原田に言われたその時に、思えば小学校の頃も、幼稚園の頃も彼女は居た記憶が確かにあったのだ。 「そ、それとたまに話してたじゃん……わたしたち」 「そ、そうだな」 「だ、だから……だから……」 「……うん……」 「わたしたちが付き合ってるって勘違いしちゃったらしくて……それで罪を奏くんに被せる事で……わたしが……奏くんを……」  なんつーくだらん理由だ……。  やってる規模が少しだけデカいだけの小学生か、あいつは。  そう呆れ返って居たら、松前夏菜が下に向けていた視線を、僕に向けて声を出す。  いつしか暑いせいなのか彼女の顔は紅潮していた。 「……あ! あのね……」 「……う!? うん?」  緊張感が走るこの空気感の中、松前夏菜はにこりと笑った。 「わたし、奏くんが好き。ずっと好きだった。起きてくれてよかった。起きたら言おうって決めてたの。早く起きてくれたからこの言葉を伝えられた。起きてくれてありがとう。お陰で早く言えた」 「……ッッ……」  好き、だなんて言葉を生涯言われる予定が無かった僕は吃ってしまう。  そんな事よりも、そのおっぱいを自由にして良いって事ですかい!?  とかそんな事言ったら、何をされるかわかったもんじゃないので自信の胸の内に忍ばせた。 「……ありがとう。僕も……す」  言葉を続けようとしたその時。松前夏菜の唇が僕の唇に重なっていた。  今度原田に会う時に、焼き肉でも奢ってやろう。僕はそう思いながら、右腕を動かし夏菜の頭を優しく撫でた。  ____________________  中学3年生の夏頃。夏休み前のある日の出来事。  僕はその日、無実の罪を被せられた罪人から脱却し、彼女が出来た。  そして、それと同時にこの世で一番怖く恐ろしいのは人間であると学んだ。
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