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「さてとっ。連休中にいい漫画いっぱい読んで情報収集しないと。まずは偵察がてら書店巡りね」
「書店ですか。時を忘れて歩いてしまいますよね」
「そうだね。ああ、あんたも来る?」
『嫌ですよ。疲れるじゃないですか』黒田くんのことだから反論はこんなところか。勝手に想像して今日もキーボードを操作しようと両手を動かす。
「いいですね、それ」
え?
「何日目ですか?何時集合にします?持ち物は?」
おいおい、乗ってきちゃったよ。雨だけどいいの?目と首は痛くならない?そんな反論をしそうになったけど、誘っておいて断る理由もないのでこらえた。
「じゃあ。2日目の朝10時からね」
「早いですねぇ。起きられるかな」
「じゃあいいわよ。別に来てほしいわけじゃないし」
「いや、すみません行きます。行きたいです」
急に素直になった黒田くんは、律儀に卓上カレンダーに「書店」なんて書き込んでる。この子と書店巡りか。なんか楽しそうかも?
「偵察のお誘いありがとうございます。楽しみです」
「あ、ああ、そう?良かったわ」
「そうだ。今日はチョコレートせんべいもあるんですが。食べますか?」
「なにそれ食べる」
手のひらサイズの黒いせんべいを受け取って口に咥え、私は今度こそ仕事にとりかかった。
しかし黒が2人も連れだって、どんな時間になるんだろう?考えつつも隣を盗み見る。私と同じようにせんべいを咥えた黒田くんは、俊敏な手つきでキーボードにブラインドタッチをキめている。あの早業、勉強になるわ。それにその思考も......。
「そうね。いっちょ勉強させてもらいますか」
「え?黒木さんついにマナー講座でも受けるんですか?」
「どういう意味よ?なんでマナーなのよ」
「すみません」
ったく。また笑ってしまう。
「イラッとするわね。まあいいわ」
黒田くんはアッハッハとまた笑って目の前のディスプレイへと視線を移す。
「まあ、僕たちは黒なんですから。イラっとしたことも吸収して、自分の熱に変えてやったらいいんじゃないですかねぇ」
独り言みたいに格言みたいなことを言われて、私は思わず目を見開いた。そっか。私は黒なんだから。だから、なんだってどんな感情だって。これから全部吸収して、私の原動力にしてやるわっ。
チョコレートせんべいを食べ終えると、私の口の周りは真っ黒になっていた。変質者みたいですねと黒田くんが失笑したので、ひっぱたいてやった。
ーendー
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