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褒められ照れるリアムだが「上層の貴女を失ったら自分は死刑でしょうし」とこの世の厳しい自然や上下の格差をさりげなく口に出す。
その言葉に「ごめんなさい、そんなつもりは」とカミラは視線をそらすと暗い空気にライナーが「あのさ、お姉さん」と袖に隠していたナイフを取り出しながら言う。
「お兄さんは失ったものが多すぎてるからこそ“優しい”。だから、失う怖さや辛さを一番知ってる。オレには分からないけど……お兄さんが辛い顔をするのは好きじゃないから“守る”。今のオレに出来るのはソレだけ。あとは、何でも屋にしては戦闘多いからオレも機械弄るの好きだし、好き勝手に武器とか消耗品作ってるけど金のために売ったりはしない。皆、生活が辛いし……お金が必要なのはお互い様だから」
そう言いながら、カミラに無言でアクセサリーを付けたナイフを渡す。
「いいの? 借りて……」
「人も機械も殺せるナイフ。ただ、オレ認識の安全装置が付いてるからそう簡単には熱を帯びたりはしない。持ってるだけでお兄さんのお守りも発動するし、戦闘中の時は物陰とかに隠れてくれたら助かるかな」
そう言い渡すと両手で丁寧に受け取るカミラ。武器の所持は初めてか。少し自信なさげだったが「一応スカートの下にホルスター仕込んでるみたいだし、銃の扱いは出来そうだなって勝手ながら思ってる。ナイフはケース付きだからしまいやすいよ。ベルト欲しかったら渡すし」とライナーの見抜く言葉にハッとする。
「分かってたの?」
「だって、上層の人が簡単に“下層に行きたい”なんて言うはずがない。ただでさえ汚いネズミがいる世界と思えば行きたくないはず」
「そういうことね。いい目をしてるわ」
「どうも。見た所、両親がいないとなれば――」
「ライナー、それ以上は駄目です」
膝をつきながらライフルを弄るリアムの声が会話を止め、鋭く刺さるようなリアムの視線にライナーは口を閉ざす。
「無礼をすみません」
「いいのよ。元々は下の人だったから気にしてないわ。そろそろ行きましょう。もし、時間が危なかったら二人の家にいこうかしら」
「え、それは……まぁ、いいですけど」
戸惑うリアム。首を傾げるライナー。下層に興味を持つ人が珍しいと思う発言だが、なんとなくライナーは二人の関係が分かるようで「泊まるんだったらオレ席外すから二人で仲良く寝てなよ」と無責任な言葉にリアムは顔を真赤にしながらライナーを追いかけた。
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