機械仕掛け

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「あっ……」  彼女の体から血に見立てたオイルが流れ、手から離れたナイフをライナーな握っては「解体作業といこうか」なんて素敵な笑みを見せながら何度も振るう。手足の関節を何度も何度も斬りつけ、刺し込み――切り離してバチバチと配線が切れ電気が一瞬纏う。  その光景はなんとも残酷で“殺人”に等しい行為だがある意味“正当防衛”でもあった。 「四肢はなくなった。じゃあ、次は頭ね」  なんて嗤う彼の行動を妨害し奪ったのは――リアム。重い銃声とライナーの右頬を弾丸が掠り、カミラの眉間に綺麗に撃ち込まれる。 「普通その距離で行ったら鼓膜切れるんだけど」 「魔改造した対物ライフルではない、火力振りのライフルです。何か文句ありますか。そんなにオイルまみれになって汚いので拭ってください」  その声は普段と変わらないが怒りと悲しみが混じっており、ライナーは袖で顔を脱がるも「オイル臭いんです」の言葉に睨みつける。 「もういいです。彼女が別人だともう知ってましたから。もう辞めてください」 「……そう。じゃあ、歯車取って帰ろ。なんか親切な人がいたのか落ちてるし」  真っ赤な手で離れた場所を指差す。そこには本来倒して手に入れるはずの歯車があり、ライナーはゆっくり立ち上がり拾いに行く。  最小限の傷。多少の擦れと凹み。取り替える品としては文句なし。周囲に誰か居たのかと見渡すも刺し殺すのに夢中で気配も感じず、深い溜め息をついては転がしながらリアムの元へ。  ――――  ―――――――  ―――――――― 「ほぅ、こんな夜遅くにすまないな。話によると通行止めを受けていたと聞いていたが」 「まぁ、それなりに。ライナーが別の道を知っていたので人目を避けて行きましたよ」 「若いってのはいいのぅ。これでしばらくは安心じゃな」  町に止まっていた歯車が組み合う音が鳴る。それは一段と大きいが町のシンボルであり、聞き慣れた音に日常が戻り始める。  だが、家に一人。オイルを水で落としているライナーはそう思ってはなく「なんか嫌なことが起きそうだね」というのも二人の不在時に一枚の便箋。  カミラを殺した時の――写真。  それに対しての褒め言葉が裏に刻まれ――。  ライナーはオイルまみれのナイフを洗い、研いでは「戻りましたよ」のリアムの言葉に写真を隠した。
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