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暗闇に太陽の光が町をゆっくり照らす。
人工の太陽ではない。
本来あるべき太陽の光。
温かく心が明るくなるも“命を削る身”にとっては仕事の合図。夜は機械が活発な時間なため基本誰も街の外を出歩かない。一部の依頼を除いては――。
「ふぅ……終わりました。あっ、九時。まぁ、変に早すぎるのも嫌ですしちょうどいいですかね」
独り言を漏らし寂しく支度をしているとライナーが真っ白で綺麗すぎる変わった手紙を手に「郵便」と家の中へ。
あまりに見かけない上品で質感の良い紙の変わり心地に表と裏を見るや「うわっ……十一階層の人から手紙」とドン引きする様子に「話してませんでしたっけ?」とリアムが口を挟む。
「自分、そっちに一人知り合いがいまして。その方の屋敷のメンテナンスをするときがあるんです。もしくは、私有地の修理確認ですね」
平気な顔でペラペラ話すリアムと違い。ライナーは本気で嫌なのか。「一人で行ってくれ」とテーブルと手紙を叩きつけ外へ。
あらあら年頃ですね、と薄く笑いながらリアムは手紙を手に取り開く。内容は“修理”案件ではなく“お話したいことがあります”と目にしたことない珍しい文章。
見間違えかと何度も見返したが何度見ても“風の噂で良くないことを聞きましてご無事ですか?”と心配などしない上の階級の人にしては【奇妙】だった。
「ライナー、すみません。いつもの案件ではないようなので下層に行く前に先に寄ってももいいですか? 速やかに済ませたいので」
家の前にある散らかった歯車や部品、パーツを分け、使えないジャンク品を踏みつけ遊ぶライナーにそう言うと「オレ、上層には行きたくないから」と全否定。しかし、そうは行かず――「アナタの失った記憶と存在意味が分かるかもしれないです」と何度も興味向かせようとするリアムに負け、結局は嫌嫌ながら連れて行くことに。
「その前にこの小さな町の治安改善はどうするの? お爺さんに頼まれてたけど」
腰につけたガンホルダーを微調整しながら部品だらけの地面を踏む。金属がぶつかり、小さく細かい嫌な音に思わず足を止めるライナーだが止めたのはその理由ともう一つの理由“動物を模したら機械”との遭遇。
獣――何年もの前に滅びた人を喰らう四足歩行の俊敏かつ一つ目の集団での借りを得意とする動物型。その機械のギザギザな歯には人間の肉と血、衣服が付着。先を越されたらしい。
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