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「あの事件に私の知り合いもいたみたいなの。機械に世界を任せるのが運命。機械が神だと言っていた悪い人ではなかったけど……見覚えあるかしら?」
「悪いけど記憶がない。何故あの場所にいたのか、自分が誰なのかわからない」
「そうなのね。ごめんなさい」
ライナー曰くその事件とそれ以前の記憶がなく、覚えているのはリアムに助けられ家で目覚めたこと。それをカミラに話すも彼女の表情は納得のない様子。
「だが……一つ分かる。化け物だってのは」
その言葉にクスッとカミラは笑っては「化け物……。そう、下層が私には平和で上層はその逆。でも、貴方が上層部の所有物だとしたら気をつけた方がいいわよ」と不自然な返事。
カミラは彼を知っているのか深くは語らなかったが“上層嫌い”という理由はそれが関連しているのかもしれない。
「アンタに言っても意味ないと思うが、リアムと違うのが一つだけ“寿命”は人間とは動きが違うらしい。オレの場合はあの人には話してないが【短命】。【延命】じゃないのは分かる」
「何故?」
「精神年齢とこの体が合わない。オレの中では二十歳すぎのいい大人なんだが……周囲の人には子供扱いされる」
嫌嫌ながら向き直り、ライナーは続けて言う。
「さっき言ってたコード。確かに持ってるが――」と左手で左目を隠しては戻って来るリアムが見え顎でさす。
「もう終わったの? 早いわね」
「はい。予備でパーツを持ってきていたので終わりました。それより、数分離れてましたが何を話していたんですか?」
過保護な言葉にカミラは微笑む。
「いいじゃない。子供が何でも屋するのは珍しいから。これ、報酬ね」
便箋と同じ封筒渡され、リアムは中身を確認。
「いつもすみません」
「いいのよ。頑張って。もしかしたら、坊やを少し借りるかもしれないわ」
「駄目です。まだ子供ですよ」
リアムの言葉は何かを隠すように見えたカミラは「そうね」と返す。腕を組み、不安か何かあるのか無意識に擦っては「十層まで送るわ」と歩みだす。
それに対して「大丈夫ですよ」とリアムが腕を掴むが物言いたそうな様子に「護衛してほしいんじゃない?」とライナーが一人歩む。
「カミラ、そうなのですか?」
「三層か四層に死者に物を手向ける場所があると聞いてたから、可能であれば花を手向けたくて。亡くなった友人に……」
「慰霊碑のことですね。何故言わなかったのですか」
「上層の人は服装や品の違いからしたり降りることは許されない。身にするものが珍しいからと襲われるのもゴメンだから……黙ってたの」
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