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魂の癒やし場所(14日目・さやかな)
穏やかな夜だった。
空には、星がさやかに照っている。宗也はそんな夜の元、一人、一軒家の縁側に寝転んで、懐かしい感覚に浸っている。ここは、かつて何度も訪れていた、恩人・柾木の家の縁側だ。意識はあるが、身体が酷く怠く、目を開けることも出来ない。ただ横になっているだけで精一杯、といった様子だった。顔色も、心無しかよろしく無い。そんな宗也の傍らに、男が一人やって来て座る。手に、酒とお猪口、緑茶の入った湯呑みが載った盆を持って。男はお猪口に酒を注いで一口飲むと、柔らかに宗也の頭を撫でる。宗也は目を閉じたままで、絞り出すように声を出す。
「柾木……さん?」
男ーー柾木ーーは、声を出そうとする宗也を、撫でて止める。
「喋るな喋るな。目も開けなくて良い。柾木おじさんだよ」
おどけたように言うと、宗也の表情は和らぐ。柾木はそれを見、苦笑いを浮かべた。
「随分、魂が疲れてるな。最近は頑張り過ぎ、気張り過ぎ、ってとこか」
言葉未満の呻き声のようなものが、宗也の口から漏れる。柾木は笑った。
「宗也はよくやってるよ。何も心配せずに、ここで休めるだけ休んでいけ。こことお前の夢は繋がってるが、もし何か来たら、俺がぶっ飛ばしてやるから」
柾木の、宗也を眺める眼差しは、優しい。宗也はそのまま、穏やかな寝息を立てて、眠り始めた。
「……ここしか、心底休む場所が無いってのも考えもんだが、成長期ってやつは仕方ねぇやな」
柾木は、宗也が次に目覚めた時にはお茶を飲ませてやろうと考えながら、酒を煽った。
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