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ある時、同じように夜の闇を楽しんでいると、遠くからゆっくり、何かを押しながら歩いているようなものが近づいてきた。舗装の悪いアスファルトを、ガタガタ揺らしながら荷物を運んでいるような、そんな音だった。
時刻は日付が変わるか変わらないかの時間。そんな時間に配達をする業者はいないし、そもそもそんな時間に、そこそこ大きな荷物を運ぶことはない。自分が向かっているとはいえ、近づいてくるその物体は不気味だった。
それとの距離が数メートルまで来た時、それが車いすだということが分かった。誰かを乗せているのだろうが、黒く塗りつぶされたように、乗っているであろうモノも、それを押す人の顔も、まるで見えなかった。
走りながらそれを通り越す。見計らったかのように、何か声をかけられた気がした。いや、実際には声をかけられていたが無視して走り去った。単純に不気味だったのもあるし、話しかけられるなんて思ってもみなかったのだ。
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