夜に染まる

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充分に離れた交差点でやっと振り返ると、車いすも、それを押す人も見えなくなっていた。近隣に住む人がたまたま外出しただけ。話しかけられたと思ったのは、2人で話していただけ。ただそれだけのことだ。 都合の良いように自分を納得させ正面を向くと、その場から1歩も動けなくなった。視界もやけに低い。金縛りのようなものではなく、一瞬で腰まで地面に埋まったかのような、重く苦しい感覚だった。 しばらくして動けるようになると、やや揺られながら、自分の身体は思わぬ方向に進んでいる。さっき走り去ってきた方向の道だ。ガタガタと揺れるその視界には、漆黒の闇が漂っている。
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