黒歴史救済組合

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最近の話。 私が駅前を歩いていた時の事。 「ユウコちゃーんっ!」 道の先から、こちらに向かい手を振っている若い女の子がいた。 待ち合わせだろうか。 恐らく、私の少し前を歩いている若い女の子が友達なのだろう。 若い女の子同士の待ち合わせだから、両手を胸の前でヒラヒラ振りながら、わぁーとかきゃーとか言ってはしゃぐものだと思っていたが、目の前を歩く女の子は全く反応しない。 恥ずかしがり屋さんなのかな?と思っているうちに、二人は近付いていく。 そして、何事もなく、すれ違ってしまった。 え、どういうこと? さっきまで手を振っていた女の子は顔を赤らめて俯いてしまっている。 私は察した。 これは『友達だと思ったら違う人だった』ってやつだ。 あー、やっちゃった。 私も経験あるけど、これは恥ずかしい。 このままでは、この女の子は待ち合わせの度、今回のような黒歴史を思い出してツラい思いをするだろう。 私はテンションをあげて、満面の笑顔を作ると、女の子に向かって叫ぶ。 「マミちゃんっ!久しぶりー!」 え?という不思議そうな顔を上げた女の子。 マミちゃんというのは私が勝手にイメージしたこの女の子の名前だ。 どうせ今回一回限りだし、周りの人たちも私たちの本名なんて分かりっこない。 友達同士だったらこうするんだろうな、と両手を胸の前でヒラヒラと振りながら、女の子に近づく。 私は戸惑う表情を浮かべる女の子とハイタッチをしながら、周りの人に聞こえないように小さな声でこっそり伝える。 「私は黒歴史救済組合の者です。話を合わせてください」 了
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