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「ともちゃん、ママに会いに行くよ!」 『うん、パパ… パパとママそしてともちゃんが公園で遊ぶ絵描いたからママに見せるね! 黒一色だけどパパ見てよ?』 「どれどれ? 上手く描けてるね… 皆んな笑顔できっとママも喜ぶよ!」 そんな会話をしながら僕と娘は車に乗り込み、かみさんがいる病院に辿り着いた。 かみさんは変わりなく酸素マスクをつけ枕元には心電図が僅かな動きをしていた。 するとかみさんの担当主治医が現れた。 「先生、かみさんの具合は?」 「そうですね… 昏睡状態は続いています… 内臓の疾患は手術によっ成功しましたが脳の損傷が大きく意識が戻らないのです… 言いづらいのですが… このまま意識が戻らないと脳死となります?」 「やはりそうですか? 先生、どうすれば意識が戻るのでしょうか?」 「そうですね… 奥さまの脳への刺激が必要と考えますがしかしその確率も僅かで…?」 「先生、その脳への刺激はどのように?」 「既に奥さまの脳へ外的刺激は行っていますが意識を戻すことが無かったのです…」 すると娘が… 『ママ、そろそろ起きようよ! ともちゃんは元気だよ! そこでママに見せたくてともちゃん絵を描いて来たよ… この絵なんだえんぴつ書きで黒なんだ。 けど素敵でしょ? パパとママそしてともちゃんが公園で遊んでいるんだよ! 本当楽しいよ!』 娘は屈託無くかみさんに描いた絵を見せ説明していた。 そんな情景を見て僕は号泣した。 「え…」 するとかみさんが眼を開き微笑んだのであった。 かみさんは娘が黒で描いたえんぴつ書きの絵を見たい一心が脳を刺激し意識が回復したのであった。 そして1週間後かみさんは病院から退院した。 かみさんは意識を取り戻し車椅子であるが僕と娘と共に生活している。 「ともちゃん、絵描いてよ?」 『うん、ママ…』 「ともちゃんママからプレゼントがあるの?」 『何、ママ?』 「ともちゃん、開けてみて!」 『ウワッー、サインペンだ! やったー』 娘はかみさんの退院後色彩の無い黒の世界から生還していた。 そして色彩豊かな世界を取り戻していた。 終
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