名前教えて

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蓮也がカフェに来てから2週間が経とうとしていた。 カランカランカラン… 「いらっしゃいませ。こちらの席に…あっ。」 私は思わず声に出してしまった。 「こんにちは。お姉さん。また会えたね。」 蓮也は私を見つめてそう言った。 (なぜ、ここに…?!) 疑問しか出てこない私。 とりあえず席に案内して注文を聞く。 「ねぇ、お姉さん。あ、坂谷さんって言うんだ。」 ネームプレートを見て言われる。 「そうです。こんにちは黒井蓮也さん。」 私も負けじと先日思い出した名前を口にする。 「あははっ。名前、調べてくれたの? ありがと〜。じゃあ、お姉さんの名前も教えて?」 「え?何でですか?嫌です。」 「だって俺だけ知られてるの、不公平。」 「それは芸能人だから…」 「芸能人差別だ〜。」 (んー、どうしよう。あ、店長にパス…って店長今いない…裏に行ったのかな…?) 今度は心の声を漏らさないようにと考えていると、 「お姉さん?」 上目遣いのイケメンがそこにいる。 「坂谷リサと申します。」 完全に口が滑ってしまっていた…。 「リサさんか〜。教えてくれてありがとっ。」 笑顔のイケメンがそこにいる。 「ど、どういたしまして…ははっ。 では、今ご注文の品を持ってまいりますので、 お待ち下さい。」 私は決まり文句で逃げた。 ------------------------------------------ それからお会計で帰る時までは特に絡まれることはなかった。 「お姉さん、またね〜。」 「またのご来店をお待ちしております…。」 (なんだろう…イケメン疲れ…いや、芸能人疲れ…? どう対応して良いか分からなかった…。もう来ないで…。) そんなことを考えながら、 私は今日の仕事を終えた。
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