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麻痺
「ただいま〜。」
家に着く頃には気持ちを切り替えられていた。
…というよりも、帰り道に気になることがあったのだ。
気のせいかもしれないが、寒気がしたのだ。
誰から視線を感じるような…。
(蓮也くんの風邪うつったのかな…。リョウくんとハルくんにうつさないように気を付けなくちゃ…。)
リサは数日経っても風邪引かなかった。
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蓮也と会ってから数日が経ったが、
連絡は来てない。
私からもしていない。
自分からすると、沼にハマってしまいそうだったから。
蓮也のことを忘れたいと思いながら、カフェでの仕事に打ち込んでいた。
そんな時、
カランカランカラン…
「こんにちは。
リサさん、いつものお願いします。」
「木村さん、いらっしゃいませ。」
木村さんとは一度関係を持っただけで、
それから関係を持つことはなかった。
ただ、
「リサさん、今日一緒にごはん行かない?」
こういうお誘いを受けるようになった。
夜に一緒に行ってしまえば、きっとまた流されて受け入れてしまうだろうと思っていたので、
「お昼ごはんならいいですよ。」
と、いつも躱していたのだ。
木村さんは大体14時くらいに
「眠くなる時間だから、コーヒー飲んで目を覚ましに来るんだ。」
と言っていたので、お昼ごはんの時間には来たことがない。
そう油断していた。
「じゃあ、お昼ごはん一緒に食べようよ。
お店とか連絡するからLINE教えて。」
躱せていたはずなのに、なぜか食い下がってきた。
(えっ!どうしよう…。お昼ならいいって自分で言っちゃった手前断りにくい…。仕方ない…。)
「分かりました。どうぞ。」
「ありがとう。行ける日連絡するから。またね。」
そう言って木村さんはお店を後にした。
(まあ、蓮也くんとも連絡先は交換したし、お昼なら何も起きようがないし、普通にお話するくらいいっか。)
既婚者は男性と二人でご飯を食べに行ったりはしない。
会社の同僚や昔からの知人や友人であれば、
まだ分かるが。
リサは二人と二度も過ちを犯していたので、
感覚が麻痺してしまっていた。
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