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風邪
ある日、リサは子どもが幼稚園で風邪をもらってきてしまい、つきっきりで看病することになった。
「すみません、子どもが熱を出してしまって…。
今日明日はお休みをいただけますか…?」
『いいのよ!気にしないで!阿部くんもシフト入ってくれたから大丈夫よ〜!
じゃあ、お大事にね〜!』
リサは店長にバイトの休みをもらう連絡をしていた。
「ハルくん、大丈夫だからね。
ママずっと一緒にいるからね。」
「うん、ママ、そばにいてね。」
そんな会話をしてる途中…
「今日も遅くなるからー。いってきまーす。」
夫の声がした。
(ハルが熱なのに、今日も遅くなるのか…。)
最近は連日遅い日が続いていた。
なんなら土日も私達を置いて出かけることが増えた。
でも、そんなことは気にならなくなる程に
リサの気持ちは冷めていた。
(せめて、行く前にハルに顔見せてってほしかったな…。)
自分は夫がいないことに、特に寂しさは感じていない。
どころか怒られずに済むことに安堵していた。
だが、ハルにとっては父親なのだ。
せめて父親として、少しはハルのことを気にしてほしかった。
(でも、リョウくん、仕事が忙しいのかもしれないし、それどころじゃないんだよねきっと。こういうときこそ、私がリョウくんを支えて、ハルのことを守るんだ。)
そう意気込んだ矢先…
子供の熱が下がり、風邪が治ったのと同時に
リサは風邪を引いてしまったのだった。
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