相談

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相談

「実は…」 私は話し出してしまった。 誰かに聞いてもらいたかった。 吐き出したかった。 家族のことは誰にも相談できず、 一人で溜め込むしかなかったから。 ------------------------------------------ 私たちは近くの公園で缶ビールを開けながら話していた。 「それは大変だったね…。 んー、僕からすると、怒鳴るなんてことは普通の状態ではしない、というか…。 旦那さんには旦那さんの事情だったり、精神的な状態が悪かったり…あるとは思う。 でも、だからといってそんなに怒鳴って良い理由にはならないかな。 リサさん、無理しないで。 僕で良かったらいつでも相談にのるから。」 そんなふうに言ってくれて、 私は救われた気がしてしまった。 「ありがとうございます。 たくさん話聞いてくださって…。 あ! 木村さんも何かあったら、相談してくださいね! 私で良ければ聞きますから! あ…、そういえばもうこんな時間…。 ご家族心配されますよね、こんな時間まで…。 私もそろそろ帰らなきゃ…。」 「いえ、僕は全然。 いつも好きな時間に好きなことをしてるので。 あ、そうだ…そしたら今度僕の相談のってくれる?」 「もちろんです!お店で…」 「いや、プライベートで。 お店は流石に…話しにくいし。」 私は少し考えたが、相談にのると言った手前断ることができず、 「分かりました…っ。」 と、変な緊張をしながら答えていた。 ------------------------------------------ 今日は木村さんと約束していた相談にのる日。 木村さんが金曜日の夜が良いと言っていたので、 夫には職場の人と仕事終わりに飲みに行くと伝え、久しぶりに夫一人に子供を任せてみた。 職場の人と行くと言ったのは、夫にあらぬ心配をかけさせたくなかったからだ。 それにお互い、異性と飲むことに関しては別に良いというスタンスだった。 禁止してしまうと、束縛してるみたいで嫌だったし、私は夫が学生の時の異性の友だちが多いことを知っていたので、飲み会くらい自由にして欲しいと思っていた。 (今日は帰ってから怒ってませんように…。) そんなことを祈りながら、 私は待ち合わせ場所で木村さんを待っていた。 ちなみにバイト先や家に近いと、見られたときの説明が面倒でしょ、ということで普段使わない路線の駅での待ち合わせをしていた。 「お待たせしました!」 急いできてくれた様子の木村さん。 「全然、待ってないですよ。 どこかお店に入りましょうか?」 夫以外の人と久しぶりに飲みに行くのに、少し緊張している私。 「僕の行きつけで、個室でゆっくり話せるお店があって、そこでも良い?」 「はい、大丈夫です。」 「じゃあ、行きましょうかっ。」 お店の常連さんと、こんなふうにご飯を食べる時が来るとは思ってもみなかった。 (でも、久しぶりのデートみたいで楽しい。) お店に着き、個室に案内され注文して お互い無難な会話を楽しみながらお酒がすすむ。 「すみません、こんなに話してしまって。 木村さん、本当にお話上手ですね。 ところで、相談っていうのはどんなことなんですか?」 私はそろそろ本題に入っても良いかと思い、切り出してみた。すると、 「実は、相談にのってほしいっていうのは嘘。 リサさんの話聞いてて、息抜きしてほしいなって思ったのと…あと、もっと話たいなっていう下心からでした。 すみません。」 木村さんが頭を下げて言う。 「え!いやいやいや!それって…完全に私のためじゃないですか!! むしろ、息抜きとか考えてくださってありがとうございます!………?ん?下心…?」 「あはは。そこ気付いた? でも、本当。じゃなかったら誘いません。」 「いやでも、私既婚者で子供もいますし…めちゃくちゃ平凡ですし…木村さんなら引く手数多でしょうし!」 「そんなことないない。それにリサさんが平凡だったらこんなに惹かれてませんっ!」 「またまたぁ、お酒で酔い過ぎちゃったんじゃないですか?お水もらいましょうか。」 と、注文ボタンに手を伸ばしたところを、 木村さんに手を掴まれた。 「酔ってない。」 急に真剣に見つめてくる。 そしていつの間にか隣の席に座られていて… 「嫌なら言って?」 そう言って嫌と言う暇も与えずにキスをしてきた。
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