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新たな出会い
木村さんと関係を持ってから一ヶ月程過ぎた時。
「リサちゃん、おつかい頼まれてくれないかしら?」
店長からのおつかいなんて珍しい。
「もちろんです!どこに行けば良いんですか?」
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そして今に至る。
ここは某アイドル事務所のビルの一室。
私はビルで仕事なんてしたことはなく、緊張していた。
「お待たせしましたー。」
緊張感のない声のスタッフと思わしき人が紙袋を手にして、それを私に渡してきた。
「あ、ありがとうございます…。」
まだ緊張の取れない私は吃ってしまった…。
(あー緊張した〜!今日は美味しいもの作ろ〜。)
そんな脳天気なことを考えて歩いていたら…
ドンッ!
人とぶつかってしまった。
「いたたたた〜。よそ見しててすみません。
大丈夫ですか?」
私が謝ると、
「あ、大丈夫です。こちらこそすみません。」
相手が顔を上げてこちらを見ると
その顔はテレビで見覚えのある顔。
(名前…なんだったっけ…。)
「名前…なんだったっけ…。」
短いようで長い沈黙。
そして自分が心の声をそのまま出していたことに気が付く。
「はっ…!!すみません!!」
「いえ、ふふっ、久しぶりに面白かったです。」
相手はどうやら笑いに飢えていたらしい。
「あ、私仕事の途中でした。
ぶつかってすみませんでした…。では。」
そう言って私は店長からのおつかいを遂行すべく、
足早に去ることにした。
リサの去る後ろ姿を見ていた青年は
「あの袋…。」
と、ボソッと言ったが
その声はリサには届かなかった。
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