黒薔薇のとげ。

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新調した真っ黒なドレス。 床に投げ出されている。 繋いでくれる手のあたたかさ。 優しいくちびる。 触れ合って、とけていく。 静かな部屋。 テーブルの上には頼んだルームサービス。 すっかり冷えてしまっている。 弱くついたルームランプ。 甘い蜜、甘い香り。 彼愛用の香水。 危険なかおり。 近づいたら、最後。 食いつくされる。 綺麗な薔薇には棘がある。 だけど、彼の棘は見えない。 甘いことば、甘い吐息。 彼愛煙の煙草。 囚われたら、逃げることはできない。 例えるなら、黒く黒くどこまでも続く闇。 闇に堕ちたら、もう戻れない。 朱に交われば赤くなる、という。 では、この黒に交われば……? 黒に、なる。 それでもいい。 だって、もう…… 黒く染まっているのだもの。 彼のくちびるで、肌に花が咲く。 彼のもの、という証。 「綺麗だ」 彼のひとみに吸い込まれそう。 「あなたも」 「ありがとう」 微笑む彼に、そっと口づけた。
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