ラベリング

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「このペンのラベル、持ち主は希一(きいち)になってるけど…………間違いじゃ、ない?」  手にした一本のペン。証拠品であるそのサファイアブルーの表面をなぞる明日花(あすか)の手。そこび浮かび上がるラベルに、明日花の声が震えた。なのに、 「…………あぁ」  希一の声は、対照的なほどひどく落ち着いていた。  間違いであってほしい。祈るように何度もラベルを確認するが、浮かび上がるのは上司である希一の名前だけ。 「異論はありませんね」  ペンは取り上げられ、希一が連れて行かれる。抵抗一つしない希一。なにかの間違いじゃないのか。すべてが色を失っていくような気がした。そんな中で、ブルーの、シンプルなものばかり選ぶ希一にしてはちょっとおしゃれなネクタイの色だけが、最後まで色を失わなかった。
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