ラベリング

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 希一と職員達を玄関ロビーで見送ったあと、明日花達は再び会議室へと戻ってきた。 「それで、どうでした」  主に足止めを担当していた桐矢は、さすがに疲れたのか、肩で大きく息をしながら尋ねる。 「桐矢は大げさすぎるだろ。明日花は明らかに棒読みだったし。なんか、見ているこっちが辛かった」 「そんなことないですよ!頑張りましたって!っていうか、いま聞いてるのはそういうことじゃないでしょ!?」  先輩に抗議する桐矢をよそに、目を伏せていた明日花は深呼吸を繰り返す。間違いは許されない。脳裏に浮かび上がるラベルをもう一度確認すると、視線を上げた。 「成功しました」  明日花の言葉に、桐矢も、班員達も息を飲む。 ────大切な人へ送ったペン。ならば、希一も相手からなにかをもらっている可能性が高い。そして、希一のことだ、持ち歩けるものならばきっとそれを持ち歩いているはず。  それが、明日花の予想だった。  だから、希一の持ち物に触れる必要があった。ただ、明日花がラベル・リーダーであることはここの職員は当然知っているのだ、下手をすればすぐにばれて引き剥がされてしまう。だから桐矢にも協力してもらった。騒ぎ立て、他の班員達にも協力してもらい、読み取る時間を稼いだ。持ち物といっても多くはない。それに、はじめから狙いは絞っていた。 「あの青いネクタイだけ、希一班長の名前ではありませんでした」  ずっと気になっていた。シンプルなものばかり身につける希一の中で、唯一雰囲気の違うネクタイ。少し前から身につけるようになったネクタイに対する違和感は、間違っていなかった。
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