ラベリング

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「まずいですよね」  希一が別室に連れて行かれてから、室内はざわついていた。それも無理はない、この班のトップが捕まったのだから。しかも、未成年を中心に広まった違法薬物を主に扱う組織の、その本拠地からから出てきたというのだ。あのペンが。  優秀で面倒見が良く、人望もある。ただ、不器用なまでの正義感故に、上層部などからはよく思われていない希一。 「明日花、間違いないの?」  他のチームで読み取られたものなら偽装された可能性も十分ある…………公的機関の一つであるラベル管理課だが、警察組織とは異なり歴史が浅いがゆえに甘い部分はいまだ多々ある。それがまかり通ってしまうのもどうかと思うが、荒廃した世界で治安の悪さも影響していた。  でも、 「間違いなく、ラベルにあったのは希一班長の名前だった」  この班唯一のラベル・リーダーである明日花が言うのだ、間違いなかった。 「それに、違うならまず希一班長が否定するはず。自分ものじゃないって」 「…………そう、だね」  つぶやき、うなだれる桐矢(きりや)。明日花に次いで若手の桐矢は、消え入りそうな声で呟いた。
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