ラベリング

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 明日花は、希一に拾われた。その話をすると決まって希一は「あれはスカウトしたんだ」と否定する。でも、拾われたんだと思っている。それがダメなら、助け出された、というべきか。  過酷なドーム外で生まれた明日花にとって、ドーム内は憧れの場所だった。明日花だけじゃない、ドーム外に生きる者はドーム内に行きたかった。ただ、居住人数には限られるため、容易いことではない。そんな中で聞いた一つの方法。  ラベル・リーダーになれば、中に住める。ただ、それは身体への物理的負荷がかかる。肌に触れたもの、すべてのラベルが読めるようになる、ということは腕を改造するとか、そんなレベルじゃない。機械への適応とか、万が一の場合のこととか、大人達が考えた色んなものの先で、明日花みたいなのが都合が良かったようだった。  でも、結局そんなに甘くなかった。ラベル・リーダーになったのにドーム内に行けない事実に目の前が真っ暗になった時、明日花を拾い上げてくれたのが偶然出会った希一だった。 「大丈夫!?」  真っ直ぐこちらへ向けられた目も、頬を拭ってくれたハンカチも。大切なものだった。
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