瞳泥棒

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 とはいえ、別に何の構想もないのだった。美術の授業なんて、どうだっていいのだ、今は。  今は、大事なことを伝えたい。 「私ね。小熊くんのことが、好き」  小熊くんのペンが止まる。 「どこが好きかっていうと、髪型とか、背が高いところとか、制服の切れ目とかが好きです」 「……制服の切れ目」 「……えっと、後ろの、ここのところ」 「……」 「だから、ごめんね。つい、じろじろ見ちゃってたかも。でも小熊くんの目のせいじゃないってこと」  これが、本当に言いたかったこと。  ああ、でも。  ついに言っちゃった。  告白っていやだな。ものすごく緊張する。 「ごめん、僕は好きじゃない」  しかも速攻で断られてしまった。 「あ、ああ、そう……」  私は、激しい動揺を隠せなかった。断られるとは、まあ、思ってはいたけど、一旦持ち帰ってもらえるものとばかり思っていたので。 「だよね……。まぁ、いいよ。まぁ、しょうがないし」  しどろもどろになっちゃって、情けないし恥ずかしい。 「き……聞いてくれて、ありがとう」  あは。なんて、無理やり笑顔を作る。  小熊くんはそんな私を、ちらっと見た。
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