瞳泥棒

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 片方の目は揺れている。もう片方の目は、揺れてない。  でもどっちの目にもちゃんと私が映っているのだな。そう思うと、何だか胸がぎゅっとした。 「……美術しよっと」  はずかしくなって会話が続かなくなり、視線を前に戻した。  目の前には雲がたゆたう、青い空が広がっている。  そしてその雲の上に、いまだに小熊くんを浮かべてしまうくらい、私は小熊くんのことが、好き。  私はその空を描いた。  一瞬ごとに移りゆく空、小熊くんも描いているであろう、この空を。  それくらい私は、小熊くんのことが好き。どうにもできない、こればっかりは。  だから私は、ここにない雲をひとつだけ書き足した。 「きみも空にしたんだ」  しばらくしてから小熊くんがつぶやいた。 「うん。おそろいだね」  そしたら小熊くん、さすがに笑った。  うれしかった。   おわり
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