瞳泥棒

3/12

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 そんなことを思ったのは、甘いメロンジュースのせいかもしれない。グラスについた水滴は、あっという間に机の上をだらしなくした。  水滴をティッシュで丁寧に拭き取る。そしてその上に小熊くんの目らしきものを、置いた。  もしもこれが小熊タケルくんのものだとしたら。  そりゃあ、まあ。  ね。  ふつうに、明日返すしかないよね。 「これ、小熊くんのじゃない?」って。  そうだ。  それで、話しかけちゃえばいいんじゃない? 「すてきな目ですね」って。  え、待って。 「すてきな目ですね」って、それ大丈夫?  それってさ、「好きです」って言ってるようなもんじゃない?  ねぇ小熊くん。  これは何?  これは目で、合ってますか?  もし、合ってるのだとしたら。  どうして私の足元に、あなたの目を置いていったのでしょうか?  もしかして、これは何かのしるしでしょうか?  そんなことを考えながら、眠りについた。  その夜、私は夢を見た。  何と小熊タケルくんの夢だった。  夢の中の小熊くんも、片方の目を失っていた。 「目、どうしたの?」  聞きながら、拾ったばかりの目を握りしめ、後ろ手に隠す。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加