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すると小熊くんは、
「なくしたから買いに行くんだよ」
と言ったのだった。
「買いに行くって。どこへ?」
「手芸屋さんへ」
「何で?」
「目が売ってるからさ。知らないの? 僕はね、実はクマのぬいぐるみなんだよ」
言ったとたん、小熊くんはポンとはじけて、私の胸の中におさまったのだった。
小さなクマのぬいぐるみになって。
いい夢だったな。
別に現実に戻らなくてもよかったのに。
翌朝。私は小熊くんの目のような何かを学校へ持っていくことにした。小熊くんに渡すために、小さく切ったプチプチに包んで、ギンガムチェックの紙袋に入れて。
さて、どうやって話しかけようか?
四月はとうに過ぎてしまい、仲良くなるきっかけなど見つかりそうもなかった。このまま、最後まで背中を追うだけで切れていく縁だと思っていた。
それなのに、まさかのチャンス到来だ。
私は勇気を出して、朝一番に登校した。どきどきするから、もう早めに話しかけてしまいたい。だから誰よりも早く教室に入り、小熊くんを待っていようと思った。
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