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言って、またかがみ込む。中腰で床を調べながら移動している。
「さ、探し物?」
「あ、うん」
中腰の小熊くんなんて、レアだなあ。私はこっそりとそのよい眺めを味わう。手足が長い。何だか狭い教室で持て余しているようだ。手足が長いテディベアみたい。私の高校の制服はジャケットで、後ろの裾に切れ目がついている。私だって同じ制服なのに、その切れ目ですら、小熊タケルくんのそれはひと味違う気がする。ものすごくよいもののような気がする。それはやっぱり、小熊タケルくんの切れ目であり、私は小熊タケルくんのすべてが好きだから、なんだろう。
私は自分の席につき、一旦心を整えた。
そして勇気を出して、スクールバッグをジッパーで切り開き、小熊タケルくんの目を取り出した。
「小熊くん」
顔を上げた小熊くんに、ギンガムチェックの紙袋を突き出す。
「これ、小熊くんのじゃない?」
よし、言えた。昨夜のリハーサル通り。
小熊くんは立ち上がって、けげんな表情で紙袋の中身をのぞいた。
プチプチから出てくる黒い瞳。
「……あっ」
ぷしゅう、小熊くんからはりつめた空気が抜ける音がした。
「……そう。これ」
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