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ホンモノの小熊くんには、やっぱり全然触れることさえできそうにないから。
「義眼っていうの」
ウォーターサーバーで水筒に水を入れていたら、突然小熊くんにそう言われた。
「ギガン」
と、私はどうにもならず、そう言い返した。
だって今私は水筒に水を入れていたし、となりにあの小熊くんがいて、まさかしゃべりかけられるとは思わなかったから。
「うん」
と、うなずく小熊くんも、水筒を持ってウォーターサーバー待ち。やばい待たせてる、急いでやらなきゃ、と思って気づいたら制服がびちょびちょになっていた。
でもそんなの関係ない。小熊くんがじっと見ている。
しかもどういうわけか、小熊くんは小熊くんで、顔を真っ赤にしている。私の制服がびちょびちょでも、それどころではないようだった。
「こっちの目、ケガして、だめになって。中学ん時」
「え」
「だから、こっちは人工の目なの」
人工の目、と聞いて、やっと「義眼」という漢字が頭に浮かんだ。「義眼」。義足、義手、と、同じようなこと。生まれつき備わった目では、ないということ。
中学?
中学の時って、つい最近じゃないか。
「……大変だったんだね」
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