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「うん、まぁ」
「……あ、ウォーターサーバー、使う?」
「あ、うん」
とぽとぽとぽ、今度は小熊くんの水筒に水が注がれる。
小熊くんの水筒は細長くて持ち手がついているタイプ。一度落としたのか、底に傷がついている。私だったら、傷がついたらすぐ買い換えちゃうのに。大事に使ってるんだな。
水を止めて、フタをしめる。
「あのさ」
急に小熊くんは、私をまっすぐに見て言った。
「面白がってるよね? 僕の目のこと」
「……えっ」
「あんまり、じろじろ見ないでもらえるかな。まじでしんどい」
そう言うと、くるっと背中を向けて、小熊くんは先に行ってしまった。
ちょっと、待った。
追いかけたいけど、すぐに動くことができない。
知ってたんだ。私がいつも密かに追いかけてること。
そして、傷ついていたんだ。私の視線に。
傷つけるつもりなんて、なかったのに。
その夜、なんとまた小熊くんが夢に出てきた。
夢の中の小熊くんは、クマのぬいぐるみのままだった。
目が二つついている。
「目、つけてもらったの?」
「うん」
小熊くんは私の腕の中で、うれしそうにうなずいた。
「すてきでしょ」
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