瞳泥棒

9/12

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「うん、まぁ」 「……あ、ウォーターサーバー、使う?」 「あ、うん」  とぽとぽとぽ、今度は小熊くんの水筒に水が注がれる。  小熊くんの水筒は細長くて持ち手がついているタイプ。一度落としたのか、底に傷がついている。私だったら、傷がついたらすぐ買い換えちゃうのに。大事に使ってるんだな。  水を止めて、フタをしめる。 「あのさ」  急に小熊くんは、私をまっすぐに見て言った。 「面白がってるよね? 僕の目のこと」 「……えっ」 「あんまり、じろじろ見ないでもらえるかな。まじでしんどい」  そう言うと、くるっと背中を向けて、小熊くんは先に行ってしまった。  ちょっと、待った。  追いかけたいけど、すぐに動くことができない。  知ってたんだ。私がいつも密かに追いかけてること。  そして、傷ついていたんだ。私の視線に。  傷つけるつもりなんて、なかったのに。  その夜、なんとまた小熊くんが夢に出てきた。  夢の中の小熊くんは、クマのぬいぐるみのままだった。  目が二つついている。 「目、つけてもらったの?」 「うん」  小熊くんは私の腕の中で、うれしそうにうなずいた。 「すてきでしょ」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加