瞳泥棒

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 私は小熊タケルくんのことが好きだ。  いつも小熊タケルくんを見てしまうし、探してしまう。空に雲が浮かんでいると、その上にさらに小熊タケルくんをほんのりと浮かべてしまうくらい、小熊タケルくんのことが、好き。  まるで大きな磁石に吸い寄せられる、情けない砂鉄のような私。自分のことなのに、自分ではどうにもできない、なんて。  今日だってそうだ。向こうから歩いてくる小熊くんを見つけた時、  すれ違いたい  と思ってしまった。  それで私の足は用もなく、小熊くんの方へと向かった。視線は密かに小熊くんの長い前髪、ふわっとした頬、できたばかりのニキビを順番に甘受する。  そんなことだから無理もない。  どんっ  小熊くんに肩をぶつけてしまった。 「ご……ごめんなさい」  思わず叫ぶと、小熊くんは 「こっちこそごめん」  と低い声で言って、笑いかけてくれた。 「小熊くんのせいじゃないよ」  言おうとして、声が詰まった。  小熊くんの、片目がなかった。  小熊くんの右目、私から見て左がわの目がない。  厳密に言えば、まぶたの内側がなく、眉毛の下にまつ毛がちょこんとくっついているような形になっていた。
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