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◇ ◇ ◇ ◇
「ふーん……」
手に持った黒い羽根を、クルクルと回しながら。
……頑張ってんじゃん。と、頬杖を解いたところで、仲間が通りかかった。
「何。また見てンの? 下」
「そ」
「また懐中時計のおもちゃ?」
「そ。色々遊んだけど、これが一番、面白い」
「どんなのだっけ?」
「まあ……簡単に言うと、周りにどぎつい不幸を呼び寄せて、それを少しだけ巻き戻せる機能がついてる」
「へー……」
「ギリギリ助けることもできるし。回避がへたくそだったら助けられない。何回でも戻せるけど、失敗する度に戻せる時間が短くなるから、成功率は下がってく。……面白いだろ」
「……悪趣味」
「誉め言葉?」
そうだな、とニヤリと笑われる。
「毎回どんな結末なわけ?」
「すぐ捨てた奴もいたなぁ。呪われたけど。――ある奴は、最初は助けようとしてたけど無理で、諦めてやりすごすようになって、また次の不幸が襲うから、そいつに近づくと不幸になるって噂になってったな……。そういや、ヒーロー気取りだった変な奴もいたな。助けて取材とか受けてさ。よくできるよな、一回は確実に悲劇を見てるのに」
「そいつどーなったの?」
「気持ち悪いから、懐中時計は回収した。その後は、知らね」
「興味なくなると早いよなぁ。――迷惑」
「――――誉め言葉だよな?」
「んー、まあ、そう。 で? 今度の奴は?」
「……まあ、ガキだけど、意外と機転が利く。今んとこ、一回目で全員助けてる。あと、オレの羽根に最初から気づいたのは、珍しい」
「へえー」
「……まあ。そこそこ頑張ったら。オレが召喚されてやっても、いいんだけど。なかなか、面白い奴いないんだよな」
「はー? 人間に使われる気かよ?」
「それっくらい面白いやつだったらいいかな」
「いねーだろ、そんなの」
「まあね。長いこと居ない」
「まあほどほどになー」
雑談の相手がいなくなる。
また下を映す鏡を、覗き込む。
――――なんか、ちょっといい顔んなってきた気がするけど。
ニヤ、と笑う薄い唇。
美しい漆黒の鳥に変化して、雲の隙間から下に向けて飛び立った。
◆ Fin ◆
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【後書き】
ここまで、ページから離れずに、読んで頂けてたら、
それだけでとても嬉しいです♡ ありがとうございます。
いつものお話とは全然違うのですが、私、ホラーとかサスペンスものとかも、大好きなんです…。書くのは難しいと知りましたが(^^;
お読みいただき、ありがとうございました(´∀`)ノ
悠里
(2024/7/14)
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