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「黒の羽根が舞い落ちる時」
天気のいい土曜日。
中学からの友達三人と出かける約束をしてる。待ち合わせの喫茶店に向かう途中、通りかかったリサイクルショップの、店頭で足を止めた。
雑に、ぽん、と置いてある黒い懐中時計。
何故か、目を引いた。値札には金額が書かれている。
……五百円? 高そうなのに。
手に取って見ていた時、店員がちょうど出てきた。
「あの、これ、五百円なんですか?」
聞くと、直しても動かないんだよ、と言われる。
「……これ、下さい」
「え、いいの? 本当に、動かないよ?」
「なんか気になるので」
そう言うと、店員は、オレをじっと見つめた。
「君、高校生?」
「はい」
「じゃあ、百円でいいよ」
「え、いいんですか?」
そう聞いたら、店員は苦笑する。
「だって動かないんだもの。どうぞ」
「ありがとうございます」
そうして、百円で手に入れた、黒の懐中時計。
一体、オレはなんでこんなもの、買ったんだ。
カッコいいけど。でもな……。
手に持った黒い懐中時計。
鎖が切れてるから何か違う鎖つけるか? でもなあ。
動かないなら。わざわざ鎖を付けて、持ってても仕方ない。
結局そこだ。動かない時計なんて、何で持つ必要が。
何で、買ったんだっけ?
そんな風に思って、少し首を傾げた。
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