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イカルは街道に張り付いている家屋を放棄して、川の対岸に渡り、小屋を拠点にして、渡河してくる兵士を弓矢で迎撃することを説明した。
「ありったけの弓矢と莚などを集めよ! 子どもたちは山小屋に避難させて、弓矢をとって戦える者は対岸の田畑に陣を取れ! 近距離の攻撃はわたしが受け持つ!」
指示を受けた村人は家の中に入り、筵や布、普段は狩りをしたり害獣を追ったりするための弓矢などをかき集めた。
既に小屋に避難している村人もイカルの指示に従って組み分けをし、移動を始めた。
川筋の配置が一段落すると、イカルは見張りを立たせて、
「このなかに、石や岩の目を読める者はいるか? 岩塩の採掘をしているなら、一人ぐらいいるだろう」
と、村人に問いかけた。
イカルの呼びかけに、三人が手を挙げた。
「すまんが、お前たち、川のせき止められている場所に案内してくれ」
「へい。それは、ようございますが、一体何をなさるおつもりで」
手を挙げた者のうち、一番年長の者が言った。
「あのときの報告が本当なら、いまからやろうとしていることが、できるはずだ。とはいえ、できるかできないかは、お前たちの腕に掛かっている」
――とりあえず見に行こう、と言って説明もそこそこに、イカルは上流に向かって歩み始めた。
三人の村人が後に続く。
途中、イカルは見張り番の者に目をとめて、「そんなに勇んでいてはすぐに疲れるぞ! もっと、景色を観るような感じでな! もし、ハイラルの部隊が現れたら呼び子で知らせてくれ!」と、いまから散歩にでも行くかのように手を振って、上流に消えていった。
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