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 つぎの朝、村は歓声で沸き返っていた。  なんと、村長のバンが戻ってきたのだ。  朝靄の中から馬に乗って現れたバンは、さすがに衰弱していた。  イカルがバンの乗った馬の手綱を引いて、ここまで連れてきたのだ。 「よくがんばったな、バン。おい、お前たち、村長を介抱してやってくれ」  と村人に指示を出した。  馬から下ろされたバンは、屋敷の中に担ぎ込まれていった。  イカルも馬から下りて後に続く。  屋敷に入るなり、「イカル様、ご無事で! 捕らえた兵士たちの尋問も終わっています!」と、治安部隊の隊員が報告してきた。 「おお、到着していたか。何よりだ。仕事も速くて、さすがだな」  と言いながら、イカルは治安部隊の隊員たちの顔を見渡した。 「班長のゲンブ君はどうした?」 「はっ! 班長は対岸で戦い方の指導をされています!」 「それは助かる。わたしがやらねばと思っていたことだ」  ところで――、と言ったイカルは、尋問の結果を隊員に尋ねた。 「塩の権利書を探していたようです」 「やはりな。それで奴等の様子はどうだ?」 「こちらが問えば、何でもすらすらとしゃべったので、いささか拍子抜けしております」 「だろうな。緩みきっているからな、ハイラルの兵士たちは」  とイカルがつぶやくと、隊員たちは一様(いちよう)に頷いた。 「それでも、数で押してくるとやっかいだ。村人たちをしっかりと支援してくれ。君たちの働きに期待している」  イカルの言葉に隊員たちは敬礼で応えた。  イカルはその後ゲンブを呼び出すと話し込み、二人とも仮眠をとって夜を迎えた。
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