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 その後、夜のはじめ頃に目覚めると、奪ってきた軍馬に跨がってハイラル方面に出かけていった。  二人は未明に戻ってくると、治安部隊の隊員たちを集め、打ち合わせを始めた。  そして、朝日が昇った――。 「昨夜、野営しているハイラルの軍に夜討ちを仕掛けて、混乱さた。ここに到達するまでの時間を稼いだ。おそらく、奴等の先陣は今日の昼頃に現れるだろう。皆は、各々の家から貴重な物品を運び出し、対岸の小屋の付近に運んでおけ。そのあと、全員で舟を対岸に移して橋をすべて落とす。わかったら、作業にかかれ」  イカルが手を叩いて合図をすると、話を聞いた村人たちは一斉に自分の家に入っていった。  手荷物をいっぱいに家を出た村人たちは、一様に緊張した面持ちをしていた。 「ほら、慌てなくていい! いまはケガをしないことが大事だ! 戦闘が起こっても無理はするなよ!」  橋を渡る村人の一人ひとりに、ゲンブは声をかける。  ゲンブはイカルから手紙をもらってすぐに、部下を引き連れてこの村に入った。  数の上での不利は承知の上だ。  常識的に考えれば、戦闘には全くの素人である村人と、自分の率いる部隊を合わせた人数でハイラル兵と戦闘に及ぶなど、狂気の沙汰としか言いようがない。  しかし、自分が現地に赴かなければ、イカルだけで村人を指揮することになる。  それに、あのイカルが治安部隊の隊員たちをわざわざ死地に招くとは想像できなかった。  考えてみれば不思議な上司で、部下たちを呼びつける権限があるにもかかわらず、手紙の文面に「来るように」との命令は書いていない。
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