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 小隊長と思われる甲冑を着た兵士に狙いを定めると、矢を放った。  矢が的中し、小隊長が水しぶきを上げて没した。  それが合図となって、村人から一斉に矢が放たれた。  矢の立った兵士たちは川に沈み、残りは引き返した。  入れ替わって、つぎの小隊が渡河を試みた。  結果は同じだった。  ハイラルの先鋒たちはさらに同じ事を繰り返した。 「おい! いい加減学習しろ!」  敵兵のアホさ加減に、イカルがたまらず毒づいた。  その言葉が届いたのか、ハイラル勢に中軍が到着すると、丸太に板を渡して仮設の橋を架ける様子を見せた。 「恐れることはない! いままでどおり狙って矢を放て!」  これまでにない兵士の数を前にしても、イカルの指示は落ち着いていた。  橋を架けるために川の中程にまで乗り出してきた兵士に向かって、村人は矢を放った。  相手からも矢が飛んできたが、ほとんどが覆いにしている筵に刺さり、突き抜けてもかすり傷で済んだ。頃合いを見計らって、筵に刺さった矢を回収し、その矢を番えた。  ハイラル勢はやっとのことで橋を架け終えた。  気が急くのか、統制のないまま、兵士たちは各々の判断で橋を渡り始めた。  渡り終えた兵士たちは陣形を整える間もなく、治安部隊の隊員たちに倒された。隊員たちが撃ち漏らした兵士は、イカルが相手になった。  しかしハイラル軍は劣勢でありながらも、数で押し寄せてきた。  イカルと隊員たちは巧みに上段の田畑に退きながら、ハイラル軍に勢いをつけさせ、自陣へと釣り込んだ。  ハイラル軍は、到着した三分の一ほどの兵数が川に沿って展開し、渡河を試みていた。 「いまだ!」
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